羽海野チカ先生の『ハチミツとクローバー』は私の中の少女漫画、恋愛漫画オススメの断トツ1位です。
元々恋愛系の漫画は痒くなってしまうので苦手なタイプな私。
羽海野チカ先生の描く話は、軸は恋愛なのですが、それ以外にキャラクター1人1人の人生や、学生特有の進路の悩みなどにもスポットライトを当て、誰でも読み込めるし共感できる話になっているのが魅力的だと思います。
ハチクロは主人公の美大生竹本くんと、転校生で才能はあるけど人との関わり方がわからないハグちゃん、そしてその周りを囲むのが真山、山田、森田の3人の学生です。
それぞれがそれぞれに恋をしていて、その想いが重なることはなかなか無いのですが、とにかく一生懸命で純粋で、見ていて涙が出てくるくらい真剣に恋をしています。
その気持ちを伝えたり、伝えなかったり、伝えられなかったり、学生ですから進路や家や自分の才能や、恋以外のところでも悩まなくちゃいけなくて、とにかく読んでいて苦しくなることが多いです。
胸を締め付けられるってこういう事なんだと思います。
そして何と言っても、羽海野チカ先生はそういう辛く苦しい表現が上手いのです。
絵面としての表現は綺麗で幻想的なのに、言葉の表現はとにかく苦しい。
読み手の心にに刺さるというよりは、じわじわと責められる感覚がしました。
きっと読み手である私自身も、登場人物達と同じような気持ちになったことがあって、それを言葉にするにはボキャブラリーが足りなかったのだけど、ハチクロを読んで『あの時の気持ちはこういう事だったのか』と思い出してしまって、激しく共感してし待ったんだと思います。
だからこそ、登場人物達を心の底から応援できて、実った想いも実らなかった想いも全部に対して拍手してあげたいくらい感動しました。
一生懸命に恋に進路に悩む学生達も魅力的ですが、彼らを取り囲む大人達もこの漫画の大事な要素だと思います。
特に彼らの学校の教師である花本先生には憧れていました。
子供達を見守りつつ、悩んでいる時には近い目線で話をしてくれて、でも先生自身も不完全でハグちゃんや皆と一緒に成長していく姿に胸を打たれました。
りかさんや野宮さんも、大人のように見えてそれぞれ中身のどこかしらかが子供っぽくて、山田や真山にそれを気付かされて狼狽えていたり、とにかく大人達が人間らしくて好きです。
登場するキャラクター達皆、一生懸命で捻くれているようで真っ直ぐで、共感できて、こんなに愛おしいと思える漫画は他に無いと思います。
ラストも予想外の展開だけど、皆幸せになれ!と思えるお話です。